実は身近なバーチャルウォーター

水って私たちの体や生活にとってなくてはならない存在で、身近なものです。先進国では当たり前のことかもしれませんが、発展途上国では水を手に入れることは簡単ではなく、その手間は子どもたちから教育を受ける時間を奪うほどです。

最近でこそ日本においても宅配水など水にお金を出すようにはなったもののそれでも日本ではそんな話を聞いても遠い国での出来事で、実感を持つことは難しいかもしれませんが、実はそのような他国の生活は、私たちが水を身近なものだと言える背景として直結しているものなのです。
バーチャルウォーターという言葉を聞いたことがあるでしょうか。バーチャルウォーターというのは、食料を輸入して消費している国において、もしその輸入した食料を自国で生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したもので、アンソニー・アラン氏がはじめて紹介した概念で「仮想水」とも言います。

乾燥地帯で水権利を巡る争いが深刻化してもおかしくないはずの中東の産油国諸国で、それらを理由とした紛争が起きないのはなぜかというところから提唱されたものです。理由として、石油の輸出で得られる外貨で食料を輸入することで、その生産に投入された水を間接的に購入したものと解釈されるという考えです。
水自体の輸送は多大なコストを要するため現実的ではないですが、その最終産物を輸入することで同様なことが現実的なコストで実現できているという効果であるという理論から、本来その生産物が完成する過程で使われた水の量を算出したもののことをバーチャルウォーターといいます。

東京大学の沖大幹はこれに対して、同じ産品を輸入国側で生産したときに必要となる水の量を間接水・輸出国側で実際に投入された水の量を直接水と呼んで区別しました。なぜかというと、特に農産物の場合は気候などの条件によって水の所要量が異なるという理由です。全体として直接水の方が少なく、結果として貿易は世界的な水の使用量を節約している形になっているのが現実です。
バーチャルウォーターは具体的にいうと、例えば1kgのトウモロコシを生産するには、灌漑用水として1,800リットルの水が必要なのだそうです。また、牛はこのような穀物を大量に消費しながら育つので、牛肉1kgを生産するには、その約20000倍もの水が必要になるのです。

つまり、日本を含めた輸入国は、海外から食料を輸入することによってその生産に必要な分だけ自国の水を使わないで済んでいるのです。言い換えると、食料の輸入は形を変えて水を輸入していることと考えることができるのですね。
日本のカロリーベースの食料自給率は40%程度となっていて、海外の水に依存して生きているともいるのです。日本のバーチャルウォーターの輸入量は国内で使用される年間水使用量と同程度で、ほぼ食料に起因しているそうです。海外での水不足や水質汚濁等の水問題は、日本人にとって決して無関係なことではないのですね。